「BALMUDA Phone」は本来こうあるべきだった。そう思わせてくれるスマートフォンが登場した。シャープの「AQUOS wish」がそれだ。
シンプルというコンセプト
スマートフォンに余計な機能なんて必要ない。背面にある巨大なカメラレンズはデザインが気に入らない。プロ並みの見栄えのいい写真を取りたいことなんて日常に殆どない。良い写真が取りたいならデジタル一眼レフを使う。6インチを超えるような画面は操作するには大きすぎる。ゲームもやらないのに高価で発熱するSoCなんていらない。シンプルで使いやすく、必要最低限のアプリがあり、携帯性に優れていて通話とネット接続ができればそれで充分。私はネット依存症の生活にはもう懲り懲りだから――そう思ったことはないだろうか。
BALMUDA Phoneはシンプルを勘違いしている
前段でだらだらと述べたコンセプトは、本来であれば「BALMUDA Phone」が意識高く掲げたはずのものだ。ところがいざ出来上がった「BALMUDA Phone」はゴテゴテと過剰に飾りすぎていた。持っているだけでその「過剰さ」が恥ずかしくなることが、「BALMUDA Phone」のデザインが「ダサい」とされる理由なのだ。「BALMUDA Phone」は「BALMUDA Phone」であることを主張しすぎていて「ほら、すごいでしょ? BALMUDAなんですよ」とドヤっているのだ。それがもう「ダサい」といえる。
「BALMUDA Phone」に多くの人が失望したのは「高価」ということや「低性能」ということよりも、本能的に感じる「コンセプトのブレ」だ。シンプルなのにデザインが悪目立ちする、シンプルなのに高価、高価なのに低性能と、矛盾の塊が「BALMUDA Phone」であるといえる。「小型車なのにスポーツカー並みのエンジンを積んでいる」というコンセプトなら格好いいのだが、「見た目は高級セダンなのにエンジンは軽自動車」というのは格好悪いのだ。
「BALMUDA Phone」は特に、実際に現物を見てみないとちがいがわからないディスプレイに高価で美しいOLEDではなく、もっとも低性能で安いTFT液晶を使ったところなど、姑息なプロダクトなのだ。これは高級紳士服にみせながら裏地が安いポリエステルといった、もっとも格好悪いやり方だ。
AQUOS wishのコンセプト
前置きが長くなったが、「AQUOS wish」のコンセプトについて、シャープは次のように説明している。
多様化する価値観の中で“モノを持ちすぎない”、 “気に入ったモノを長く大切に使い続ける”という志向に向き合い、 「シンプルで飾らないスマホ」をコンセプトに開発しました。 持ち心地のよさを追求し、 優しい手触りのマットな質感や指がかりのよい側面形状などを採用。 植物などの自然をモチーフとした年齢や性別を選ばないカラーバリエーションに加え、 ノイズを抑えたシンプルで飽きのこないデザインに仕上げました。
「持ち心地のよさを追求し、 優しい手触りのマットな質感や指がかりのよい側面形状などを採用。 植物などの自然をモチーフとした」といったあたり、おどろくほど「BALMUDA Phone」と丸かぶりのコンセプトだ。なのに仕上がりがまるでちがうところが興味深い。
使いやすいデザインとは、単に外観や素材のことだけではない。
「AQUOS wish」は防水・防塵・耐衝撃に対応する上、おサイフケータイも利用できる。決済アプリを一瞬で起動する「Payトリガー」機能があり、街で買い物するという日常生活でのシンプルな利便性を追求している。めったに使わないプロ並みのカメラより、毎日の買い物のほうが大事なのはいうまでもない。
2年間で最大2回のOSのバージョンアップにも対応しているから、長く大切に使えるだろう。環境にも配慮し、本体の筐体には再生プラスチック材を35%使用している。一見すると安いプラスチック製に見えるかもしれないが、わざわざ「再生プラスチック」を使っているというところが見えないお洒落というものかもしれない。
「AQUOS wish」も「BALMUDA Phone」と同じく液晶ディスプレイだ。解像度もフルHDですらない。だが、「AQUOS wish」が目指しているシンプルさは街乗り軽自動車のような手軽さだ。お洒落さでマウントを取るMiniではない。だから持っていても恥ずかしく感じない。「BALMUDA Phone」のように街にありもしない「石」をモチーフにした不自然な外観ではなく、家の中や日常生活に溶け込む外観に仕上がっている。
使いやすく実用的でありながらシンプル、シンプルでありながらも環境にも配慮している。そんなミニマリズムを形にしたのが「AQUOS wish」なのだ。スマートフォンは道具だ。ガジェットフリークでもSNS中毒ではない多くの人にとっては、スマートフォンは本来こうあるべきではないだろうか。
「AQUOS wish」はスマートフォンを利用する多くの人にとって、「ちょうどいい」スマートフォンであるはずだ。「こういうのでいい」がちゃんとカタチになっているスマートフォンなのだ。
AQUOS wishの主な仕様
OS |
Android 11 |
サイズ/質量 |
約 H147 × W71 × D8.9mm/約162g |
CPU |
Qualcomm Snapdragon 480 5G Mobile Platform |
内蔵メモリ |
RAM 4GB、ROM 64GB |
ディスプレイ |
約5.7インチHD+(1,520 × 720ドット) 液晶ディスプレイ |
アウトカメラ |
有効画素数 約1,300万画素 CMOS |
インカメラ |
有効画素数 約800万画素 CMOS |
Wi-Fi® |
IEEE802.11a/b/g/n/ac |
Bluetooth® |
Ver.5.1 |
バッテリー容量 |
3,730mAh(内蔵電池の標準容量) |
防水/防塵 |
IPX5・IPX7/IP6X |
生体認証 |
指紋認証 |
その他の機能 |
おサイフケータイ/NFC |
AQUOS wishの発売日
発売は2022年1月中旬以降となり、auやソフトバンクなどから発売予定。
source:AQUOS wish